理事長所信

2019年度 理事長所信

公益社団法人豊橋青年会議所 2019年度

第68代理事長  村井 裕一郎


古くして、新しき

古くして、新しきものこそ繁栄する。

 

 

 

 

 

はじめに

2019年。30年余り続いた「平成」から、新時代の幕開けとなる年。豊橋青年会議所にとっても1951年の創立以来、昭和、平成、そして新時代と3つめの時代を迎えようとしています。私たちは、過去を受け継ぎ、そして未来へつなげることを任されたリレーランナーとして、過去から未来までを一貫する視点に立って、よりよい社会を創りあげていく責任世代としての役割を担っているのです。 長期的な視点に立つためには、今の常識や仕組みは、将来も永きにわたって通用するものなのか、その一時代だけに当てはまることなのか、常に思考を巡らせねばなりません。現代社会の常識や仕組みには、明治時維新後の近代化や戦後の高度成長期において構築されたものが多くあります。様々な分野におけるグローバル化と情報化の進展、少子高齢化社会の到来による働き方改革、モノづくりからコトづくりへの移行という社会構造の変化の中で、それらは社会全体としての齟齬や不具合、軋みとなって現れています。

社会構造が変化するとき、社会構造の変化を食い止め、常識や仕組みを維持しようとする態度と、変化する社会構造を受け入れて、新たに常識や仕組みを構築していく態度があり、私たちは、その二つの方向性の葛藤のなかで生きているといえます。これらは相反するものでありますが、共存できない考え方ではありません。この二つの相反する態度への葛藤から逃げず、その葛藤から共存を生み出していくことこそが、今という時代に責任を持って対峙し「古くして、新しきもの」へと繋がっていきます。

古いことを古いままやるのでは、時代の流れに取り残されていきます。かといって、新しいことにやみくもに飛びつくのでは、時代の流れに翻弄されることになります。時代の流れを掴み、乗りこなし、時に時代の流れそのものさえ創り上げるには、これまで培ったことの本質を活かしながら、今の時代を的確に捉えて、受け継いだものを変容させていくことが重要です。そのような「古くして、新しきもの」こそが、永きにわたり繁栄できるのです。

これまでの歴史の中で、それぞれの時代のランナーが、それぞれの時代に対峙してきました。私たちは、私たちの時代に対峙せねばなりません。今の時代のまちづくりは、今の時代に生きる私たちの責任で行うことです。その責任に対する覚悟を持って私たち豊橋青年会議所は明るい豊かな社会へ向け、ひとづくり、そして、まちづくりに邁進してまいります。

 

全国城下町シンポジウムの開催

本年度は『流動~それでも、不変の神髄がある~』をスローガンとし、第38回全国城下町シンポジウムを主管します。本大会は、平成から迎える新元号最初の全国城下町シンポジウムの開催となります。多くの城郭が作られた戦国、安土桃山時代から、城下町が形成される江戸時代、そして、近代化後の明治、大正、昭和、平成と、時代に合わせ、その社会的意義を変容しながら、その時代時代に求められた役割を全国各地の城下町は果たしてきました。

この豊橋の中心にある吉田城は、戦国時代の土塁の名残や、各時代の石垣、戦争中には軍用地として使われた歴史が残り、現代では市民が集う公園として、各時代の面影が残っているという特色があります。また、東西南北の交通の要衝として、多くの人々が往来し、交流を深めてきました。だからこそ、この豊橋で行う全国城下町シンポジウムでは、特定の時代や人物などに偏ることなく、城下町の歴史と向き合うシンポジウムが開催できると考えます。

そして、この全国城下町シンポジウムで追求することは何か、それは、新時代にふさわしい城下町のまちづくりとは何かを、新時代を生きる私たちが責任を持って考えること、そして、次の世代に受け継ぐことです。古来の魅力を抽出するだけではなく、これからを見据え、流動をもとに、新たな魅力を発信し価値の創造に繋げる、そのような全国城下町シンポジウムを開催してまいります。

また、全国城下町シンポジウムの開催と力強い発信は、私たち豊橋青年会議所の力だけでは成し遂げられません。私たちがこれまで続けてきた市民協働まちづくりの一環として、このまちの多くの市民の皆様、友好関係を築いてきた多くの関連団体の皆様との協働を図りながら、真に豊橋のまちに根付いた大会となるよう邁進します。そして、近隣や友好関係にある各地青年会議所の皆様との連携も重視し、全国城下町シンポジウム開催を機に今まで以上の連携構築へと発展させていきます。 この全国城下町シンポジウムというまたとない機会は、これからのまちづくりに活かせる形にしてこそ、開催する意義が初めて生まれます。豊橋青年会議所を起点とした発信を、他の地域をも巻き込んだ 大きな運動とすべく、その実現へ向け全力を尽くします。

この全国城下町シンポジウムというまたとない機会は、これからのまちづくりに活かせる形にしてこそ、開催する意義が初めて生まれます。豊橋青年会議所を起点とした発信を、他の地域をも巻き込んだ大きな運動とすべく、その実現へ向け全力を尽くします。

 

豊橋の魅力の戦略的発信

グローバル化が進み、国内では東京への一極集中が叫ばれる現代、地方都市である豊橋はどのようにして存在感を高めればよいのでしょうか。価値観が多様化し、SNSなど個人の発信力が増加した現代では、どの都市に住みたいと思うか、訪れようとするか、そしてそこでどのような体験をしたかも、自己表現の一つとなっています。そのような社会では、豊橋に住んだり訪れたりすることに、インフラや施設などの物質面だけでなく精神的な価値を見いだし、様々な人がそれぞれに共感できる豊橋の魅力を外に向かって発信していくことが重要です。そして、まちの魅力の多様性こそが、様々な人を惹きつける力となります。

共感は五感の体験から生まれます。豊かな文化があり、自然に触れることができ、まちを歩くことが楽しく、刺激的な出会いや体験をし、豊橋に住めば楽しそうだ、豊橋に行けばおもしろそうだ、そんな感覚、感情から生まれる動機にこそ人々は共感し、その共感が豊橋の外にも広がることにより、豊橋が国内外の人を惹きつけてやまないまちになります。

そして、豊橋は既に多様な魅力を持っているまちであり、これまで、私たち豊橋青年会議所も様々な形で提示し、市民の愛着を深める運動を行い成果を上げてまいりました。これからは、青年経済人だからこその冷静な分析力と柔軟な構想力によって、主観的な愛着を客観に耐える魅力へと昇華させ、国内だけでなく世界の人々から見て、どのようにしてその魅力が共感されていくのか、そして共感されるためにどのように発信していくのか戦略を確立する局面となります。内からの古くからの魅力を、外からの新しい共感評価軸で再評価し、青年経済人ならではの戦略で発信していくこと、ウォームハートとクールヘッドが噛み合った発信こそ、私たちの役割であります。今まで豊橋が長い歴史の中で培ってきた豊橋の魅力を、今一度認識し、これまで育まれてきた市民の豊橋への愛着を外への大きな発信に変えて、豊橋を地域間競争の中でも燦然と輝くまちにしてまいります。

 

東三河の特色を活かした産業の創設

東三河は、域内を縦貫する豊川を中心に、鳳来寺山などの緑豊かな山々と肥沃な豊橋平野、そして、内海の三河湾と外海の太平洋、これら特色ある自然が近距離内に存在する特性を持つ美しく豊かな地域として、独自の風土や文化、産業を育んでまいりました。そして、東三河8市町村は、このような特性を背景に、行政、経済の分野においても、東三河の母なる川豊川の水の恩恵を受ける運命共同体として連携を保ちながら発展してまいりました。

一方、東三河は愛知県平均を上回るペースで高齢化が進行しており、かつてのような右肩上がりの成長を望むことは困難であり、人口減少・高齢化に対応するための産業構造に転換していくことが急務となっています。そして、グローバル化の進展により、世界経済の影響を地方においても強く受けるようになってきており、東三河もその例外ではありません。産業構造の転換には、山海川が近接するこの地域固有の多様な自然と、それを背景に発展した文化を強みとして発揮していくことが重要になります。

私たち豊橋青年会議所は東三河4青年会議所と協力し、「東三河はひとつ」の合い言葉の元運動を展開してまいりました。それを受け継ぐ私たちは、時代に合わせた問題意識を持ち、なぜ「東三河はひとつ」にならなければいけないのか、そして「東三河はひとつ」になりどのような地域であるべきか、地域を維持するだけでなく発展に繋がる大胆なビジョンを、青年経済人としての構想力を活かして提示し、その実現に向けてこの地域をリードしていかねばなりません。東三河の自然や文化を活かした世界の中でも輝く産業ビジョンをこの地域に提示し、世界に通用する東三河づくりへと邁進していきます。

 

まちづくりに繋がる地域の人財発掘

まちを想う気持ちに、資格は要るのでしょうか。このまちをよくしたい、このまちに貢献したい、そう想う気持ちには年齢も、性別も、出身も、学歴も、職業も、国籍も、何の制限も必要ありません。このまちには、37万人の多様な人財で溢れています。そして、私たち、豊橋青年会議所の入会資格も同様に、年齢以外、何も制限はありません。

様々な人々を一人でも多く仲間として受け入れることで、青年会議所に集うメンバーに青年会議所にしかない出会いをもたらすとともに、私たちの運動はより多様な視点を取り入れた重層的なものになります。そして、これまでも毎年40歳を迎えたメンバーが卒業し、そして新たなメンバーを迎え入れることで、新陳代謝が行われ、連綿と続く思いを受け継ぎながら新しい風を取り入れてきました。

しかしながら、私たち豊橋青年会議所は同規模のLOMに比べても女性会員比率が少なく、多様性という点で、まだまだ発展の余地が残されています。青年会議所の入会資格である20歳から40歳に限っても、約4万5千人の市民がいます。私たちは、活動を通じて、もっと多くの人財と出会うことができるはずです。

だからこそ、単なる組織のための募集事業だけではなくまちづくりを見据え、多様な人財と出会い同志として迎え入れていくための仕組みを整え、青年会議所の魅力を様々な人に分かるように伝えていく必要があります。少子高齢化社会が進む現代では、介護や育児など、様々な背景を持ちながら働く人々が増えています。そのような社会に存在する組織として、私たちの特色を活かしながら多様性を確保するために何ができるかを考えた組織作りにも着手してまいります。

そして何より、私たちは市民の皆様を巻き込む運動を展開する団体です。最も明確に巻き込む形とは、ひとりでも多くの市民の皆様をともに明るい豊かな社会の構築へ向けて邁進する同志とすることです。すなわち、ひとづくり、そして、まちづくり運動のための一丁目一番地として会員拡大活動に取り組み、地域の人財を発掘し、ともに活動を行う同志としてまいります。

 

技術革新による社会変革

技術革新は常識や仕組みを変えます。例えば、中世、鏡が安価に作れる技術革新により、庶民が鏡によって自分を客観的に見られるようになったことで、自分を客観的に認識できるようになり、「自我」や「個人」という概念が誕生し、民主主義の進展へと繋がったと言われています。技術革新は社会の常識や仕組みを変えるインパクトを持つからこそ、社会変革には技術革新を活用する視点が欠かせません。

私たちの生活に密接する政治、行政の世界においては、民主主義誕生以来、古くからの選挙を通じた間接民主制の本質は変わらないなか、技術革新により、市民が多くの情報を得られるとともに、首長や議員、あるいはその候補者と直接コミュニケーションをとれるようにもなりました。

しかしながら、4年前、公職選挙法解禁を始め、政治、行政への技術革新活用への法整備がなされてはいるものの、まだまだ不十分な現状も事実です。そこで、政治的中立の立場をとる青年会議所だからこそできる、地方政治、地方行政における技術革新を活用した市民参加のパラダイムシフトをおこし、市民の主権者意識の向上につなげてまいります。

さらに、次世代の社会変革を担う子供たちに目を向けると、彼らの時代にはさらに技術革新が進んでいるはずです。彼らは、私たちがまだ見たこともないような機器や、想像もできない技術を使って仕事や生活するのでしょう。そして、彼らは、そのような未来において、技術革新により常識や仕組みが変化する中で、彼らの時代の社会を変革していかねばなりません。

常識や仕組みが変わるなかで社会変革を起こしていくためには、技術によって変わる常識や仕組みと、変わらない本質を見極める必要があります。変わらない本質とは、古くから家庭や地域、社会などを通じて受け継いできた人としての心や精神性の部分であります。ギリシャやローマの哲学があり、日本では論語を始め如何に人間性を高めるかという学びが育ち、禅や茶道など精神性を高める文化が育ちました。新しい技術を逞しく積極的に活用し次世代の常識や仕組みを創りだし、古くから伝わる人としての本質を融合しながら社会を変革する開拓者としての子どもたちを育ててまいります。

 

規律から生れる凜とした品格を持つ青年経済人として

近年、市民運動も盛んになり、地域づくりやまちづくりに携わる団体が数多く存在し、様々な勉強会、交流会などの研鑽を積む機会、様々な人に出会う機会も増大しています。そのため、青年会議所しかない時代から青年会議所もある時代になったとさえ言われるようになりました。しかし、青年会議所しかないものが無くなったわけではありません。他団体と比べ、青年会議所しかないものが見えにくいために、違いが分かりにくくなったのではないでしょうか。

青年会議所にしかないものとは何か。私たちが受け継いできた青年会議所の精神や慣習、規律に、その答えの一つがあると考えます。三信条に基づいた活動をし、品格ある青年経済人として資質が開発され、志を持ち、市民のために率先して行動する地域のリーダーとなる機会、それが青年会議所にしかないものです。

そして、品格とは何か、それは自己規律によって生まれると考えます。志を実現するためには、自分への厳しさ、自己規律を持った態度こそが求められ、それが、凜とした品格としてにじみ出ます。そして、一人ひとりのメンバーから滲み出る品格が、青年会議所しかない魅力として市民に発信されていくのです。

新時代を迎え、社会の様々な仕組みが変わりゆく今だからこそ、品格ある青年経済人としての資質開発の機会として、LOMに受け継がれてきた精神を見つめ価値を再認識する機会を提供します。そして、私たちに伝わる精神が形になって表れたものであるセレモニーを大切にし、厳粛で凜とした総会運営を行い、これまで受け継がれてきた精神を引き継ぎ、品格ある青年経済人の組織作りへと繋げてまいります。

 

戦略広報の確立と運動発信力強化、LOM内の情報共有促進に向けて

私たち青年会議所は市民と地域を変革していく団体です。私たちの運動は、市民の皆様に届いてこそ、初めて意味があり、市民の皆様へ向けての発信はすべての活動の基盤です。情報化社会の進展により、多種多様な発信ツールが発達し、これらを十分に活用すれば、驚くほどの効果が生まれます。事実、ほんの数名の運動がインターネットを通じて拡散し、世界的なムーブメントになった事例は枚挙に暇がありません。現代の情報化社会は、市民に向けて発信をし、運動を起こし、社会を変えていくための大きなチャンスが広がっているのです。

この情報化社会で私たちの運動が最大限の成果をもたらすためには、戦略的かつスピーディーな発信が重要です。幅広い多数へ向けた発信に力を発揮するSNSなどのデジタルツールから、人と直接ふれあう中で思いを伝えていく口頭コミュニケーションなどのアナログな手法まで、あらゆる手法を最適に組み合わせるとともに、目まぐるしく発信される様々な情報に埋もれない力強い発信ができるよう、戦略的な広報を確立し活動の基盤としてまいります。そして、力強い発信のためには、私たちの組織内部においても、一人ひとりが広報の重要性を認識し、市民啓蒙団体として一人ひとりの発信力を高めていく活動にも取り組んでまいります。

さらには、私たちがどのような団体で、これから何をなそうとしているのかを私たち全員が共有し、主体的に意見をぶつけ合い、そして、自分事として当事者意識を持って市民の皆様に対して一人ひとりが説明できるようにならねばなりません。そのために、委員会の枠を超えてLOM内の情報共有を進め、事業に対する理解を深めるLOM内広報活動も積極的に進めるとともに、私たち自身が当事者意識を持って活動を行っていくために、私たちの未来の行動を決める役員選任総会において、議決権を行使する意義への理解を深め、より積極的な参画を促してまいります。

 

LOMの組織力向上

豊橋青年会議所は「会議所」であります。その名の通り、会議をする場所であり、相手を想い、このまちを想い、本気で議論することでメンバーの成長に繋げてまいりました。また、議案を軸とした意思決定の仕組みは年々ブラッシュアップを続けており、議案精度を求める過程も修練の一環として確立され、様々なルールや仕組みが整備されています。しかしながら、ルールや仕組みの精緻さは、外部の市民の方から見た分かり難さ、あるいは、青年経済人らしい機動力や発想力を妨げることに繋がる危険も孕んでいます。

そこで、その運用手法であるルールについては情勢にあわせて見直し、外部の方とより協調しやすく、メンバー一人ひとりの可能性、委員会の可能性、LOMの可能性、そして、このまちの可能性が十二分に発揮できる仕組みとなるよう、組織力を向上させてまいります。その一方、ルールの柔軟な見直しが、組織としての形をなし崩し弱めることにならないよう、私たちがこれまで受け継いできた規律を尊重することも欠かしてはなりません。

明るい豊かな社会を創りあげていくという大きな目標を見据えながら、ルールは柔軟さを、規律は厳格さを心がけ、このまちの皆様から求められる期待により一層応えられる、時代に応じた組織づくりを進めてまいります。

 
 

むすびに

古くして、新しきもの繁栄する。

私たちは、この時代のランナーとして、時代に応じて変えていくべきものを変え、受け取ったバトンを繋いでいかねばなりません。

そして、何を変えるべきか、何を変えてはいけないのか、それを判断していくことが、その時代、その時代の当事者の役目であります。

私たちに必要なものは、変えてはいけないものを保ち続ける情熱、変えるべきものを変える勇気、そして、変えてはいけないもの変えるべきものを見極める英知。

私たちは、古くして、新しき青年会議所運動へむけ、邁進してまいります。